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- 「相続税と贈与税の一体化」とは?生前贈与ができなくなる?
目次
現在、「相続税と贈与税の一体化」の議論が進められているのはご存じでしょうか。
富裕層が生前贈与により節税をしていることに対する不公平感などから、贈与税と相続税を統合しようという動きがあるのです。
今回は、相続税と贈与税とは何かについてご紹介したうえで、現状の問題点や相続税と贈与税の一体化についても解説します。
相続税と贈与税とは?
そもそも、相続税や贈与税とはどのような税なのでしょうか。
相続税とは
簡単にいうと、相続税とは亡くなった方の遺産を引き継ぐ際に課税される税のことをいいます。
また、相続税が課税される条件としては、「遺産総額(課税価格)が基礎控除額以上であれば相続税はかかる」ことになります。
逆をいえば、遺産総額が基礎控除額に満たなければ相続税はかかってきませんので、相続税対策や申告の必要もありません。
基礎控除額は、以下のように計算します。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
贈与税とは
贈与税とは、生きている方から財産を贈与された場合に生じる税のことをいいます。
ただ、生前贈与であったとしても、相続時精算課税を選んだ方や、相続開始前3年以内の贈与については、相続税が課税されます。
生前贈与の場合は、「基礎控除」という非課税枠(110万円以下)があるため、少額で毎年おこなう生前贈与は節税対策に向いていると現在はいわれています。
相続税と贈与税の税率とは
さて、相続税と贈与税の税率を見ていきましょう。
①相続税の税率
法定相続分に応ずる取得金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%
②贈与税の税率
基礎控除額 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超 55%
以上のように、贈与税の方が税率は高いことがわかります。
ただ、生前贈与は、相続税のように持っている財産をすべて贈与するわけではないため、「相続税の税率が高いので相続する方がお得」と判断することはできません。
現状の相続税と贈与税に関する問題点とは
現状の相続税や贈与税などの税制に関する問題点について見ていきましょう。
資産移転の時期が異なることによる不公平感
先述したとおり、1年間の間に何度贈与したとしても、110万円以下であれば非課税となっています。
現在は、「暦年課税制度」を取っているため、課税されるのは「1年間の間の累計贈与金額ー110万円」となっています。
たとえば、10年間毎年110万円を贈与し続け、計1,110万円贈与したとしても、贈与税を支払う必要がないのです。
一方、これをまとめて贈与した場合は贈与税なら40%、相続税なら15%の税率がかかってくることになります。
このように、贈与額・相続額の合計金額は同じであったとしても、いつから資産移転を始めたかによって課税額が変わってくることは、不公平だという問題点もあります。
老老相続が増えている
贈与税は高い税率が設定されていることから、110万円以上の生前贈与に関しては回避される傾向にあります。
そのため、高齢者が持つ財産を生前贈与することが抑制的になっており、結果して老老相続が増えています。
つまり、若者に財産が分配されないという問題点もあるのです。
相続税と贈与税の一体化とは
現行の相続税と贈与税の問題点を踏まえて、議論されているのが「相続税と贈与税の一体化」です。
相続税と贈与税の一体化とは
相続税と贈与税の一体化とは、贈与税の対象となったものに対しても相続税を課すことをいいます。
つまり、言葉のとおり、相続税と贈与税の統合するのです。
これにより、110万円以下の非課税枠を利用した暦年贈与などを防ぎ、資産移転の時期に関わらず課税されることになります。
ただ、現行でも一部相続税と贈与税が一体化しているといえる仕組みもあります。
①生前贈与加算
生前贈与加算とは、相続者の死亡日3年前以前に相続された財産についても、相続税の加算をするというものです。
これは、自らの死期を感じたことにより、相続税が課税されることを防ぐために生前贈与するという動きを防ぐためのものです。
生前贈与加算は、110万円以下の非課税枠にも適用されることにも注意が必要です。
現在、相続税と贈与税の一体化が議論されていますが、専門家によっては、今後この生前贈与加算の「3年」が「5年」や「10年」など、引き延ばされるのではないかという見方をする方もいます。
②相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、20歳以上の方が60歳以上の直径尊属からもらった財産をすべて、相続税の対象とすることができる制度です。
適用するためには、事前に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要となります。
この制度を適用した場合、「累計2,500万円までの贈与は非課税」というメリットもありますが、最終的には相続税として支払わなくてはなりません。
海外の相続税と贈与税はどうなっている?
では、海外でも相続税と贈与税は一体化されているのでしょうか。
・アメリカ:相続税と贈与税は一体化
一生涯の累積の相続税と贈与税に対して一体的に課税。
・イギリス、ドイツ・フランス:相続税と贈与税は一体化している
一定期間(イギリス7年、ドイツ10年、フランス15年)の累積贈与額と相続財産額に対して一体的に課税。
このように先進国でも相続税と贈与税は一体化されているケースが多いですが、たとえばアメリカの場合は基礎控除額が約10億円など、国のもともとの税制も異なります。
ただ、ドイツやフランスのように、一定期間を累積して課税する制度をとっている国も多いことから、日本の死亡日3年以内の生前贈与加算が、「5年」「10年」と延びていく制度改正が現実的だといわれています。
今後の節税対策はどうすればいい?
では、相続税と贈与税の一体化が進むなかで、私たちはどのように節税対策を進めていけばよいのでしょうか。
①子どもだけではなく、孫にも生前贈与する
子どもだけだと、毎年の110万円の非課税枠では、贈与できる金額に限りがあります。
そこで、子どもだけではなく、孫にも生前贈与することにより、毎年のトータルの贈与金額は大きくなります。
このように、法律が変わるまでの間に、少しでも次の世代に財産を渡すには、贈与する人数を増やすことも効果的です。
②子どもが不動産を購入するときに、一部親名義にする
不動産、建物の相続は、税率が比較的低いことも利用できます。
たとえば、子どもが不動産を購入するときに、一部親名義で購入し、相続のときに子どもに引き渡します。
そうすることで、節税にはつながることになります。
③住宅資金贈与を使う
今の制度では、住宅取得資金として贈与するときは非課税となっています。
そこで、もしこの制度が今後も尊属しているのならば、子どもが住宅を購入する際は、住宅取得資金贈与をおこなうことで節税ができます。
④「相続する財産」と「贈与する財産」を整理する
どうしてもこれまでのイメージから、「相続よりも生前贈与の方が節税につながる」と考えられがちです。
ただ、財産によって贈与でなく相続する方がよいものもあります。(投資用不動産など)
もう一度、自らの財産で何を相続すべきか、贈与すべきかを整理するとよいでしょう。
まとめ
以上、相続税と贈与税の一体化についてご説明しました。
制度が改正されるまでは時間の問題かもしれませんので、早めにできる対策は着実にしておきましょう。
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Writer この記事を書いた人
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