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インタビュー
「世界中からお部屋探し」外国人向け不動産ポータル「Mooovin」株式会社KACHIAL 髙橋代表インタビュー
2008年をピークに日本全体の人口は減り、労働力人口も減っています。それに対し増えているのが、在留外国人数。2023年3月には、2022年末の在留外国人数が過去最高の307万人を記録した(※)とも報じられました。しかし実は、外国人が日本で家を探すのは大変なんです。今日はそんな問題を解決する外国人向け不動産ポータルサイト「Mooovin」を立ち上げた株式会社KACHIALの代表の髙橋幸一郎さんにお話を伺いました。
【前半動画】
【後半動画】
ーー「Mooovin」について教えてください
日本に引っ越したいと思う外国人が、海外にいながらオンラインで日本国内の「外国人が入居できる賃貸物件」を探し、申込み、オンラインで契約をしていただき、クレジットカードによる決済までを一気通貫で提供するサービスです。
ーーなぜ「Mooovin」を始めたのでしょうか?
4つの理由があります。
外国人が入居可能な物件データベースを探しても見つからない、と困ったのが1つ目の理由です。もともと当社では、外国人の留学生向けに賃貸仲介事業をしていました。しかし、外国籍を理由に入居を断られるケースが非常に多く、外国人入居可能物件を探す手段も、一軒一軒管理会社に連絡するしかなかったんです。結果として、日本人が賃貸物件を探すのと比べて5~10倍の手間がかかっていました。
2つ目の理由はニーズを確信したことです。私は15年ほど高齢者介護の業界に在籍していた時期があります。当時から高齢者介護業界では、ベトナム人を主体とした数多くの技能実習生を受け入れていました。ある時当時の部下から連絡があり、「来月ベトナムからの実習生が来るが、家がまだ見つかっていないので助けてほしい」という依頼をもらったんです。この時、全国の高齢者介護施設で同じようなニーズがあるだろうとの確信に至りました。
3つ目は、日本全体の問題です。2008年をピークに日本の人口は減少に向かっています。その中で住宅については供給過多になるだろうと予測されています。それに対する有効な解決策が、外国人を受け入れていく、ということじゃないかと思っています。
4つ目は、サービスの実現にあたってポイントとなる「物件掲載会社へのアプローチ」が可能と考えたためです。当社が所属する全管協という団体には、1,900社の会員企業が所属しています。このネットワークの活用により、物件を掲載してくださる賃貸管理会社に対するアプローチが可能と考え、実現を決めました。
ーー外国人が日本で家を借りるのは、それほど大変なのですね
そうなんです。日本国内で家を借りられることは、日本人には当たり前ですが、外国人には当たり前にできないんです。この問題を解決するのが「Mooovin」のミッションです。家を借りられないと日本での生活がスタートできないですから。
ーー「Mooovin」実現で難しかったところを教えてください
「Mooovin」の検討段階で、必要な機能として、電子契約、ビデオミーティング、オンラインでクレジット決済が可能な家賃保証などが挙げられました。
そのため、10社ほどが参加するコンソーシアムを作ったのですが、このメンバーが定期的に集まり、実現に向けての方向性を調整するのが非常に大変でした。
幸い、メンバーの方向性が一致していたために比較的早く実現ができましたが、自社だけで実現できるサービスではないので困難な部分もありました。
ーー実際に「Mooovin」を始めてから感じた難しさはありますか?
大きく2つが挙げられます。まず、各システムを47都道府県におけるアパートやマンションに関わる商習慣に合わせるところです。よく知られている関東・関西の違いだけではなく、各地においてさまざまな習慣があり、対応が難しかったですね。
そしてまた、システム連携も大変でした。不動産業界は徐々にDXが進んでいますが、各社で導入しているシステムも多岐にわたりますので、かなりの困難がありました。
ーー建物オーナーさんへの説明で大事にしていることを教えてください
まず、安心感をお伝えしています。具体的には、家賃滞納リスクが日本人に貸す場合と比べてもあまり変わらないこと、「Mooovin」は管理会社との橋渡しを含めた入居後のフォローまでしっかり含まれたサービスです、とご説明しています。
ーー「Mooovin」を始めて嬉しかったことはありますか?
一緒に取り組んだコンソーシアム各社のメンバーが、「Mooovin」の取り組みを信じ、手を抜かずに細部まで意見を酌み交わし、一つの目標に向かって取り組めたのは嬉しかったです。
ようやくスタートラインに立てた感じでしょうか。
ーー海外の方に物件を紹介するとき、日本の慣習で一番驚かれることは何ですか?
サービスを始める前に各国の不動産事情を調べました。しかし、どの国にも礼金という文化はないため、外国人にはなかなか理解しがたい文化です。貸主が有利な契約条件、商習慣というのは否めないところです。
また、家の中で土足が禁じられているのも、他の国々では普通ではありません。なぜ靴を脱がねばならないか、脱ぐとどのような結果があるかを丁寧に説明して、理解していただくことが肝要です。
ーー「Mooovin」実現前に海外の事例などを調査されましたか?
この半世紀、真にグローバル化が進んでおり、ナショナリズムというより、それぞれが違う背景を持った人種の方々が世界中で交わり合って、いい意味でも悪い意味でも変化がおこっています。
そのような世界の中、さまざまな文化の方が理解し合える仕組みのためのリサーチを行いました。結果、日本は単一民族国家という前提で制度やシステムが設計されているがゆえに、さまざまな障害が起こるだろう、という想定に至りました。「Mooovin」はさまざまな文化の間に立ち、融和を図っていければと思っています。
ーー外国人の入居希望者は、どのようにオンライン内見をされていますか?
物件を丁寧に決めたいというより、簡単に、スムーズに住める物件を見つけることを重視している方が非常に多いと感じています。
ーー今後の「Mooovin」の展望を教えてください。
現在は、おもに一般の賃貸物件を紹介しています。
来日するITエンジニアの方々には、プロジェクト単位となる3カ月や6カ月という期間で借りられる住居のニーズがあるので、今後は家具付き賃貸やマンスリーの物件、シェアハウスなども扱う必要性を感じています。
また、最終的に日本で家族とともに本格的に暮らしていきたいという方々もいらっしゃいますので、区分マンションや収益不動産、戸建て物件など売買物件の掲載をしていきたいと考えています。
ーー話が変わりますが、サイトに登場している「Mooovin」のキャラクター、かわいいですね。
ありがとうございます。こちらはムーム(沐沐)という名前で、日本と世界の架け橋として異文化コミュニケーションを促進していくためのキャラクターです。国を問わず、親しんでいただける発音・読みにしており、日本人にも、外国人にも発音しやすい名前を選びました。
「旅行が好きで地球にきた。地球の文化を学んでいる。地球人と仲良くなりたい。いろんな星を回る中で地球が楽しそうだと思っている」という設定です。
ーー「Mooovin」における具体的な契約の流れを教えてください。
① 海外にいる入居希望者の方に、「Mooovin」を通じて、国内の物件を検索していただくところから始まります。
② 気になった物件があれば、物件の詳細を確認いただきます。また、物件の詳細ページから、ワンクリックで初期費用概算の見積りが出ますので、そちらもご確認いただきます。
③ 内容にご納得いただいたところで、ユーザー登録をして、オンライン上で正式な申込みを行っていただきます。
④ 申し込みを受けた管理会社が入居審査を行い、審査を通ると家賃保証会社に情報が連携され、保証審査が実施されます。
2社の審査を通過後、賃貸契約に関わる重要事項説明(オンライン)を実施する日程の調整を行います。まず、入居希望者の方から5つの候補日程をあげていただき、管理会社が3つ選択し、最終的に通訳をしてくださる通訳の方の都合に合わせて日程を決定します。
⑤ 重要事項の説明を実施したら、賃貸借・家賃保証などの電子契約を締結します。
⑥ クレジットカード決済をオンライン上で実施し、「Mooovin」サイト上で行う海外からの申し込み手続きは完了します。
⑦ 最終的に、物理的な鍵の引き渡しなどの日程調整をいただき、場所と時間を確認の上引き渡し、ご入居、という流れです。
ーーオンラインで契約と支払いまで完了できるのはすばらしいですね。何カ国語まで対応されていますか?
英語・中国語・ベトナム語の3カ国語です。この3言語で、来日されるほとんどの外国人へのコミュニケーションをカバーしていると考えています。実はそれ以外の言語をお話される方には、英語も話す方が非常に多いんです。この3言語で、ほとんどの国の方に対するサービスが提供できると考えています。
ーー髙橋さん個人について伺わせてください。ご自身の人生のターニングポイントになる出来事はありますか?
1年ほど日本の高校に通っていたのですが、16歳からアメリカの高校に転入し、現地の大学を卒業したことが、重要なターニングポイントであり、今の自分を作り上げている大きな出来事だと思っています。
本当に多様な国の人が在籍している学校で、世界の広さを感じることができる貴重な機会でした。人と人の違いを突き詰めると、違うのは人種ではなく、個人個人ということを身をもって学びました。
ーー海外の暮らしで大変だったことはありますか?
アメリカはもともと移民国家で、多種多様な民族が共存し尊重しあっている文化です。そのため、外国人を理由に差別されることはなく、大変だったことはあまりありませんでした。
変化していくことや、自分と異なる意見を持っている人たちと接することが当たり前だったので、意見が違う人と意見を酌み交わし合うのが自然であり、それは衝突ではないと思えるようになりました。
ーー経営者として意識していることを教えてください。
常に変化し続けることです。世の中は常に変化を続けています。私が子供だったときには携帯電話はありませんでしたが、いまやスマホで世界中のあらゆる情報にアクセスできるようになりました。
時代は変化しているし、日々進んでいます。われわれの生き方や仕事の仕方も常に変化していくべきです。今日の普通は明日の普通ではなく昔である、という時間軸で生き、常に変化に耐えられる柔軟性を持った会社であろう、自分であろうと心がけています。
ーー新規事業を始めるときに重視している事柄はありますか?
継続的にサービスを提供できるか、ということを一番初めに考えます。
住という、生活に不可欠な分野ですので、いったん始めたけど止めますというわけにはいきません。十分に継続性を吟味したうえで、やり遂げられる確信をもってスタートするようにしています。
ーー個人で今後取り組みたいことはありますか?
今はとにかく「Mooovin」の成功のために全力で取り組んでおり、他のことに浮気している暇がありません。ただ、私の人生の中で節目節目で取り組みたいことに出会えている幸せは感じています。
このプロジェクトが形になるまで、5年から10年ほどかかると思うので、5年10年たつうちに、また新しくやりたいものがでてくるんじゃないのかなと思っています。
ーーかねてより課題になっていた在留外国人・訪日外国人の住居問題をインターネットや法整備の活用により解決するサービス「Mooovin」。人口が減少する中、多様化が進む世界で他国に負けないよう、このようなサービスがもっと増えると不動産業界のみならず、日本全体が元気になるのではと感じました。これからも「Mooovin」、髙橋代表の活躍が楽しみです。
取材協力
髙橋幸一郎さん略歴
株式会社KACHIAL 代表取締役社長
日本国内の高校1年修了後、単身渡米マサチューセッツ州 Cushing Academy入学。同州Bentley universityにてManagementを専攻し卒業。新卒で大手外資系ITコンサルティング企業に入社。高齢者介護施設を立ち上げ、施設の運営会社、医療系コンサルタント企業をへてLuminous Corporationを創業。2015年5月株式会社ハウジング恒産 取締役副社長就任。2017年7月より同社代表取締役へ就任。2020年6月株式会社KACHIALへ社名変更、現在に至る。
KACHIALについて
会社名 :株式会社KACHIAL
代表者 :髙橋幸一郎
所在地:東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル38F
設立 :1975年4月9日
コーポレートサイト:https://kachial.com/
外国人向けポータルサイト「Mooovin」:https://mooovin.jp/
※【出入国在留管理庁】令和4年末現在における在留外国人数 https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00033.html
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