最寄りのコンビニまで行くのに少し覚悟を決める必要がある。当地は自衛隊の演習場レベルで草木が生い茂り、当該物件の前は産廃業者の仮置き場なのか廃車や家電が積まれている。坂道を越えないと駅にも店にも部屋にも行けない立地は控え目に言って修行。小山と称していいほどの坂道を抜けると文明的な町と大きなイオンがある。直線距離ならそこまで離れてないはずなのに物件周辺との隔絶感が激しくて慣れないうちは目眩を覚える。異世界から現代に戻ってこれた喜びを錯覚してイオンや隣接のホームセンターで爆買いすると買い物袋の重さで帰路途方に暮れる。戦中戦後のヤミ食糧買い出しの気分をカジュアルに体験できる。夏場の炎天下なら熱中症でくたばりかねない。自分は耐えきれず坂の途中のタクシー会社に駆け込み依頼した。この物件で生活するには車か原付が無いと厳しい。自転車は坂に殺される。あと物件自体はゆるめのスラム風。狭いエレベーターの落書きがいい味を醸している。建物最下層の薄暗い駐車スペースで物陰から急に人が出てくるとうっかり悲鳴を上げそうになる。